霊魂千里を走る;不思議な体験 その1

次の話は、母から聞いた話だ。

私が4歳の時だったという。

夜中に突然(私が)起きて「お父ちゃんが帰ってきた!!」と、大声で叫んだという。

私は父の顔をまったく知らないのにだ。私が母のおなかにいるときに、父は戦地に向かったからだ。なのに、「お父ちゃんが帰った!」と言ってきかないので祖父と祖母が雨戸を開けて、暗い庭先を見せたら、なんとか納得した、という。

この日こそが、父が戦死した本当の日ではないかと、今でも思っている。

    雪時雨イチゴに今日も毛布かけ

    しいたけが思わぬ雪に首すくめ            (つづく)